【インタビュー】東京吉祥寺『よみた屋』古本買取業界の雄大な流れから生まれた「本屋としての在り方」

東京で古本買取・販売をしているお店を巡り、これまでのこと、いまのこと、そしてこれからのことを、バリューブックス寄付担当・難しい本マニアの「廣瀬聡」がインタビューしていきます。今回は東京都武蔵野市吉祥寺にある『よみた屋』の澄田さんにお話をお伺いしました。

みんな「古本買取」という仕事に、どう向き合っているんだろう。 そんな問いからスタートしたこの企画。 東京で古本買取・販売をしているお店を巡り、これまでのこと、いまのこと、そしてこれからのことを、バリューブックス寄付担当・難しい本マニアの「廣瀬聡」がインタビューしていきます。 今回は東京都武蔵野市吉祥寺にある『よみた屋』の澄田さんにお話をお伺いしました。  

インタビューを終えて(廣瀬)

古本買取東京_よみた屋インタビュー_廣瀬 正直に言うと、そんなに大きな古本屋さんじゃないところで、お話を聞ければ...みたいな気持ちでインタビューに向かったのだが。
古本・古書業界の雄大な流れや、これからの古本・古書買取の方向性、本屋としての在り方・姿勢などなど、すごくスケールの大きい話を聞かせていただき、非常に不遜な構えで来てしまった感じがした。

時間の長さも世界の捉え方も大きく、自分の本屋としての在り方を見つめなおすキッカケになるインタビューだった。

『よみた屋』の古本買取-発酵編-

澄田さん: 10年前(の本)はちょっと厳しいかなって思う。20年前の本はもうだめだと思っている。
━━きたーヤバイ...

澄田さん: 20年前はダメで、もうちょっと50年くらい経つと生き返ってくる。
━━味が出てくる

澄田さん: 古い食べ物と同じで、ちょっと(時間)が経って腐っちゃったのはダメだけど、うまく置いておいて発酵した奴は食えるっていう。
━━でもそれだと熟成するのはウィスキーと同じで資金がもたないんじゃないですか?

澄田さん: 取っておいて採算を取るのは無理。よっぽどのすごい目利きの人ならできるかもしれないけど。後々発酵するやつを見抜けるかもしれないけど、僕なんかはできないんで。お客さんの所でうまく発酵したやつを見つけて。
━━なるほど。できかけを

澄田さん: 自分のところで発酵させるのは、もう僕には無理。
━━(これはうまく発酵するって)分かる人いるんですかね

澄田さん: いるかもしれないですけど、それはもうジョージ・ソロスみたいな人じゃないと。それができるならもっと他のことで稼げるんじゃないですか。(笑)
━━初版本探してる古本屋さんありますよね。僕よみた屋さんはそれかなってちょっと思っちゃったんですけど。稀覯本(キコウボン)と言うか、推理小説作家の初版本で一冊しか見つかってないみたいな。 それが別に有名でもなんでもなくて、誰も競合相手いないし欲しい人時々いるから10万円くらいでポンと出品しちゃうという。そういう方向性は、よみたやさんあるんですか?

澄田さん: 僕は自分がコレクターではないのであんまりそういう方向性ではないです。お店見ていただかどうかわかんないですけど、あまり文学自体をやってないんですよ。だいたい(古本屋の)皆さん文学やっている方が多い中で。
僕は真っ向勝負しないタイプなので、人のいない方へ、ブルーオーシャンを探して逃げる方向。
━━ジャンル的なこだわりがないということですか?
古本買取東京_よみた屋_店内 澄田さん: なくはないですけど。僕は難しい本が好きなんです。難しい本って本屋も敬遠するから、あんまり競争相手がいないっていうか。
━━哲学ってわけではない

澄田さん: 哲学も、もちろんやりますけど。なんか難しいなーって思う様な本がすごいなぁって気がして。読んでも「わかんないなぁ」っていうような本を尊敬してるんですよ。なので難しい方へ難しい方へ、と。
━━僕だと吉本隆明だなぁ。2ページ読んで挫折して、でもすごい本なんだろうなぁみたいな。他の(本好きの)人に言わせたらそんなの簡単だけどってなるような気もするけど。

澄田さん: 僕も学生の頃吉本隆明ははみんなが言ってるから読もうとしたんですけど、全然意味わかんなかった。
━━そういう類(の本)が並んでる?

澄田さん: そういう類が並んでいます。
━━実際それを求めて買いに来られる方は多いですか?

澄田さん: 多いと思います。うちのお客さんは売る方も買う方も大学の先生とか、研究者の人が半数以上占めていると思います。あと学生とか大学院生とかがほとんど。ほとんどは言い過ぎですけど、半分くらいって感じがしますね。

古本買取の価格を決める「方程式」を求めて

━━うちのサイトにも出てる「いい本ってこういうのです」っていうのがあって、ベストセラーで昔たくさん売れてた本はダメなんですよね。昔売れなかった本の方が実はいいみたいな図があって。
よくバリューブックスの買取サイト見させていただいてますよ。いくらで買うってやつ。
これは売れ行きが早いから値段が高い、これは(売れるのが)遅くて安い、みたいなやつ。これは便利だなって。
バリューブックス_おためし査定
━━えー!やったー!でもあれちょっと前に変えちゃったんですよ。あの表が出なくなっちゃて。
えっ!表が出なくなっちゃったの?顔が出て泣き顔とかになるやつ。
━━販売もはじめて、書誌ページをリニューアルしたときに

あれ僕はすごい楽しいなって。
━━社長に伝えておきます

頭もスッキリするし。
なんとか買取の方程式作れないかなーって考えたことがあるんですけど。売値と、売れるまでの時間の関数のハズなんですよ。いくらでいつまでに売れるっていう。
━━そうですよね

だから1年の間に売れる確率は何%かっていう、そういう考えでもいいかもしれないですけど、その「時間」をどうやって数値化するのか?が難しいんですよ。

金額はね1000円とか2000円とかはっきりしてるんですけど、(売れるまでの時間が)長いとダメなんですよ。売れる時間の逆数みたいなのを出さなきゃいけないんだけど、1ヶ月を1として、0.3なのか3なのかで変わる。そういう風に(買取価格を)決めるんじゃないかと思うんだけど、中々ね。
━━amazonのランキングと在庫期間が連動してる理論があって、(データ分析)やってみたんですけど、3万位くらい、1万位くらいかなぁ。おおっ!て感じで相関してたんですよ。そのときは。

3万位とかだったら、絶対すぐ売れるんですよ。10万位とかだとまあ普通。100万位を超えるともう売れないかなぁ。非常に大雑把に見て。何千位とかそういうのは当日売れるとか、Amazon出せば翌日には発送する段階にある本がわかる、そんなの(方程式)があると。
━━でも、そんな方程式立てたって、今年(2020年)の5月とかにカミュのペストがだだ売れするなんて、方程式では(計算でき)ないですもんね。

古本屋か新刊書店か。本の販売について考える。

古本買取東京_よみた屋インタビュー_新刊か古本か その辺を経験と勘でやってる面があるんで、遅いんですよね反応が。僕なんかは何でも気がついた時にはもう在庫がないんですね。こんなのいっぱいあるはずって思うけど(気づいたら)もう全然ないですよ。びっくりするなぁ。
自分ちになくなったことではじめて「あ、これ売れるんだ」って気づくわけですね。しかも同じ本なんか何冊もないから。売れちゃってから、気づく。
━━そのときには仕入れられないという古本屋の悲しい...なんか本屋になりたいけど古書店になりたいか新刊書店になりたいかっていう時の分岐点の話を聞くとそこですよね。「私は好きな本をどんどん売りたい方なんで新刊書店をやりたい」って言っていた人がいた。あれどこの人だっけな...

新刊書店だって扱えるものってすごい限られてますよね。
━━そうですよね

今、出版社にあるやつしか(販売)できない。
━━そうなんですよ。(新刊を)買おうと思っても実はない、アマゾンにすらない、っていうのは結構ある。

新刊書店は美術全集を作るのと似ていると思うんです。美術全集を作るときはレオナルドダビンチだろうが、ミケランジェロだろうが、いいやつをどんどん載せられるじゃない。いいとされてるものは全部載せられるけど。
古本屋は美術展をやるようなもの。
━━なるほど

キュレーターになって美術展をやろうとしたら、じゃあ偉大なルネッサンスの絵画を全部集めた美術展をやるぞなんて不可能、できないわけですよ。
もう「持ってこられるもの」っていう制約のなかでやるしかないんだけど、それでも頑張ってこの一点をなんとか貸してもらおうとか、特別な視点でキュレーションしていくとかそうゆうのを制約の中でやるわけなんだけど。
でもある意味、美術全集だったら絶対に載せなきゃいけないものとかって決まってますよね。
━━これは置かなきゃいけない・これだけは並べなきゃいけないっていうのがあってやるのと、持ってこられるものの中で美術展をやるのと。その違いですね。

『よみた屋』の「古本の値付け」の話が深かった

古本買取東京_よみた屋インタビュー_値付け ━━今は難しい本をたくさん集めるって方に

集めないです。すぐ売っちゃうから。
━━コレクターではない?

コレクターじゃない。買うのが好きなんだよね。もう買っちゃったら...
━━満足?

満足。(笑)
━━本屋さんに向いてる

でも売りたくないですよ、もちろん。だから売るのは僕じゃないので。売る担当は分けている。
━━ああなるほど。そこは分けて。すごい。本を売りたがらない古本屋さんもありますよね。全部自分一人でやってて。

自分のものっていうね。
━━(自分のお店の)本や商品を大切にしているというか、でもだからいいお店でもある。中々切り分けられないんだろうなって。
「お客さんちょっとそんなに乱暴に触らないで」ってなっちゃうから。(笑)
━━高い値段つけちゃえ、みたいな。(笑)

そうそう。売れないような値段つけちゃったりね。
━━だから(本屋としての)葛藤がすごいあるんだなぁ、って。でもそれは切り分けてるんですね

そんなに精密にやるわけじゃないんだけど、僕は買う担当であって、売るのは店長っていう人がいて、売る方を任せて。
━━販売部門責任者と仕入部門の責任者、みたいな

値段とかも、もちろん機械的につけてるんじゃなくて人間が考えてつけてるんですけど、僕がつけるとやっぱり、「この本は!」ってみたいになって、つけがちなんですけど。
店員さんにやってもらうとすごくクールなんで、そっちの方が売れるんですよね。
ただあんまりそれをやっちゃうと、今度お店の味がなくなっちゃうんで、ちょっと売れ残るぐらいのところを狙わなきゃいけないんですけど。(笑)
━━僕も思うけど、自分の好きな本が安い値段だと何となく嫌になる。かといって高いと買わない、ひどいんだけど(笑)
ちょうどいいところってあるような気がする。大したことないんだけど、500円だったらいいなぁ、でも150円だったらムッとする、っていう。「お前なぁ!」っていう。で、結局150円で買うっていう。(笑)

最初に見た人がいきなりバッって買っちゃう値段つけちゃうと、お店なので品揃えがなくなってつまんないものだけになっちゃう。専門店やってる人は特にそうだと思う。たとえば鉄道の専門店やってるのに、安くつけてたらその本がどんどんなくなっちゃって、何にもネタがないみたいになっちゃって。
ちょっと最初に見た人が買わない、ぐらいの。どうしても欲しい人だけが買うとか。うちだと最初に見た人がすぐ買うってわけじゃなくてちょっと考えて、次の日戻ってきて買う、ぐらいの。(笑)
━━あぁ、ちょっと悩んでから...値付けってすごいなぁ...

でも普通の値段ですよ。普通の値段につけるってこと。相場通りの値段でつければ、そうなるってこと。
━━(澄田さんが)言われた通り俺一回見過ごすもん。大した値段じゃないのにさ。2冊で1000円とか、それぐらい買えよって思うけど。(笑)でも一回見過ごして、次行ったらないみたいな。それを2回くらいやるともう、買うっていう。

この値段じゃ二度とないだろうって思ってすぐ買う、みたいな値段だったら安すぎじゃないですか。
でも、この値段だとまあこの本だとその通りかなって思うぐらいなら今買わなくてもいいかなって思うけど、でも今買わないと、とか買って損はないなって感じて戻ってきてくれるっていう。
━━すごいな、それは...それでもおそらくロジカルなマニュアルはないんだと思うんだけど。でも今まで積み重ねてきた値付けの仕方ですよね。

そうですね
━━たぶん最初からでもできたわけじゃないですよね。始めた頃から。

まあ、そういう意識はなかったですけど、ちょうどよくつけるってつもりではつけてきた。でも、長く店をやってると、棚に差したらなんか1時間後くらいに出た(売れた)とか言われると、なんか損してる気がする。(笑)
━━はぁ~(笑)そういう経験を積み重ねていって、「ちょうどいい値付け」が洗練されていったっていうのがあるんですかね。

そうですね。でもまあ今はネットがあるでしょ?前はなかったから、それこそ勘とか。
この人のこういう本ならこのくらいだろうって、割と大雑把。2500円から3000円かなぁって感じだったから。
うちもAmazon出しますけど(出品価格は)最低1000円からです。安いのを出すとの手間賃の方が高くつくので。だったら店頭で100円で売っちゃった方がいいかなぁ~と。
 

『よみた屋』がはじまる前-古本古書業界の雄大な流れ-

━━どういうきっかけで始められたんですか?

始めたのは1992年、平成4年です。元々古本屋で勤めてたんで独立したっていう流れで。学生時代にアルバイトしていてそのまま卒業してそこに5年くらいいて、28歳の時に独立して西荻窪で始めた。
学生時代アルバイトで、卒業して社員になって。90年前後ですよね。町田の高原書店ってところにいったんですけど、ブックオフが始まるのが90年でしょ。
あそこ町田市と相模原市、隣なの。すぐ近くだった。それとか伊藤グループは八王子市なんですよ。
やっぱりまあまあ近いところで、そういうのが一気に生まれた感じですよね。
90年ごろに高原書店も150坪くらいあるフロアでお店をやってたんですよね。で、一般書コーナーと専門書コーナーがあって。一般書コーナーは全部定価の半額で。
━━そうそうそう。値付けめんどくさいから。(笑)

そう、値付けをしてないんですよ。(1冊1冊に売値が)書いてないんです。定価の半額ですって表示がしてあるだけで。レジを打つ人がカバーを見て、380円なら190円、と。
━━そこからその一般書の販売を大量にする会社と、専門書に特化して扱う古本屋と別れていった

10坪くらいあれば十分大きい古本屋だったんですよ、その頃はね。10坪っていうとおける本の数で言うと1万冊もないわけですね。漫画と文庫と、雑誌みたいなやつが主力商品で棚が両側にあって真ん中にあって。奥に主人が座って、で、ここ(主人の後ろにある棚)にちょっとその店の専門みたいな、フランス文学みたいのが並んでて。「うちはフランス文学が強いですよ」って本棚が言ってるんですけど、ここの本は売れないわけですよ。これは買い取りをするための看板みたいなもの。

郊外の本屋さんは、だいたいお客さんから仕入れて神田の市場に出すと、神田の専門店の人たちがそれを買ってくれる。で、お店に置いてある本はそんなに売れないんですけど、スーパーの前とかで古本市とかをやると普通の文庫とか漫画とか売れるので、そうゆうので食べていた。そういうのが、昭和の古本屋の、郊外の古本屋の一般的な感じですよね。
━━なるほど

だけど、要するに大量出版って言う時代になって。それが1970年台の終わりから80年台ぐらいにかけて、同じ本が大量に印刷される時代になるわけですね。

そうすると、そういうものに対して、10坪しかない古本屋っていうのは全然対応していけてないから、すきま、残った一般書を扱う一般書の専門店であるブックオフが台頭してくるんですけど。それに先駆けて高原書店っていうのは一般書も扱う古本屋っていうのをまあ、やっていたんですよね。
━━その流れでブックオフが生まれるんだ

で、今は「個性派古書店」みたいのところっていっぱいあるじゃないですか。逆にブックオフみたいのがあるっていうことが前提になってて、で「ブックオフに置いてないものをおこう」っていう。アンチブックオフとして(昭和の古本屋の再来として)「個性派古書店」が出てくるっていうのが僕の理論なんですけど。(笑)
━━すごいなんか雄大な歴史が展開されているわけですね

 

『よみた屋』のこれまで

東京吉祥寺_古本買取_よみた屋 僕はその中間くらいのところで店を始めたので、まだ東京にブックオフがない時代。相模原や地方郊外にはあったけど、都内にはなかった。そういう時代に西荻で店を始めたので。だから、アンチブックオフというよりかは、高原書店にあった一般書じゃなくて専門書コーナーだけを持ってきて、やるかなーって感じだった。
━━でも場所が西荻そして吉祥寺でちょっと羨ましすぎるポジションですけど。よく見つかりましたね。

西荻はね、当時中央線で一番家賃が安かったんですよね。
━━(当時は)始めやすかったんですね

元は多摩地区にいたので、何とか23区内に入ろうって。(笑)
ギリギリ西荻は23区内なので、だからなんとかそこでやろうって。私鉄とJRと比べると圧倒的にJRの方が乗降客数も多いし、そりゃもうJR沿いでやらなきゃダメだなぁって。まあそれで、中央線ってことになった。
━━じゃあ西荻で1号店をはじめて、そこから移ってきたのが。

吉祥寺で始めたのが1997年ですね
━━吉祥寺は(家賃)安くないでしょう...

まあ安くはない。安くはないけど最初に始める資金としては安かった。

僕の父親がサラリーマンだったんですけど、もう仕事辞めたいから「俺に店をやらせてよ」って言ってきて。で、阿佐ヶ谷に店を作ってあげて、そこの店長をしてもらって、西荻と阿佐ヶ谷でやってたんですけど。
━━2店舗やってたんですね。
西荻のお店って、いま音羽館があるところ、あそこでやってたんです。13坪なんですけど、6坪と7坪、二つの部屋を繋いだような所だったんですね。だからもっと広いところでやりたいなぁって。そしたらあそこ(吉祥寺)の店が借りられるって話を聞いて。で、じゃあやっちゃおうか、ってことではじめたんですけど。

3店舗始めたら、ちょっとして父親が病気になっちゃって、そしたら僕が1人で3店歩回ってやるのはやっぱり大変で。だんだんこう経営が厳しくなって。

1人でっていうかもちろんスタッフもいて。スタッフの中から店長を育ててみたいに思ったんですけど、やっぱうまくいかなくて。 西荻と阿佐ヶ谷は結局閉めて、吉祥寺だけにしたっていう。
━━けっこう戦国絵巻...(阿佐ヶ谷の)2店舗目をだしたときは経営はうまく行ってたんですか

その頃はうまく行ってましたね。
━━高原書店に勤めていた経験から、古本の買取と販売のノウハウは自信があったんですか?

自信はありましたね、そういう意味では。どんどん(高原書店が)支店とかを出してたので、支店始める時に僕が行って、開店みたいなこともやってたから。新しく店をやるっていうのは、どうやるかだいたい見当がついてたんで。
まあ経営面はやってなかったから、お金をどう工面するとかそういうのはわからなかったけど
━━そこ(経営)は新しいチャレンジだった

でも、棚をいれるとかそういうのは経験がずいぶんあった。3店舗から4店舗(開店を)やったことがあるから。
 

『よみた屋』の古本買取-「買取の型」の重要性-

東京吉祥寺_古本買取_よみた屋フライヤー ━━「おじいさんの本買い取ります」って言うキャッチはすごくわかりやすい。バリューブックスも創業してすぐは専門書を専門に買取していた。

そうですよね。「通信で買取してAmazonで売るってお店は専門書はダメだ」っていうイメージを変えましたよね。
━━(当時は)専門書OKで書き込みOKでね。その時代に俺入ってるから。

専門書、学術書には絶対に自信がありますって書いてありましたよね。
だけど専門書と大学の教科書みたいのも区別がつかないと、大学の教科書を買っちゃう。
そうじゃない専門書とどう区別するんですかって、そこだと思うんですよね。
━━なまじそこらへんの造詣があると専門書は得意ですっていう言葉は出てこない。若さの凄みですよね。

━━ここから少し、よみた屋さんの古本買取について教えてください

型式(フォーマット)が一番重要ですよね。僕一人でやってるわけじゃないから、フォーマットがないところでやろうとすると大変なので。
お客さんとのやりとりは、電話が中心。電話がかかってきて、どういう本があるかを(スタッフに)聞いてもらうんですけど、質問集みたいのを作ってこういうことを聞いてくださいってお願いをしてる。でもなかなかうまく聞けないんですよ。もうちょっとフォーマット練り直さないといけないなって思うんだけど、でもないよりはマシです。

それで、最終的に質問してもらった回答用紙を見て、この買取をやるかやらないか判断する。
━━(出張買取に)行くのはお1人なんですか?

行くのは基本的に僕だけ。もちろん運転手と二人で行きますけど、目利きをするのは今は僕だけ。あとはまあ宅配(買取)は宅配担当が見てますので。店頭(買取)はその時いる人がやる。
━━宅配は誰でもなんでも送ってくださいって感じなんでか?

やっぱり選んでます。バリューブックスさんだったら基本的にバーコードのあるやつ買ってると思うんですけど、僕らはそう言ってないので。今日も平凡社の百科事典が...
━━うわ、出たー!

もう毎日あります。平凡社の百科事典。複数ある日も多いですね。それを断らないといけない。百科事典はあるけど、他に買える物があるときにこっちだけ送ってくださいって、なんとか(伝えようと)。
━━僕も寄付で出張買取みたいの行ったことある。百科事典とか美術全集きたときは倒れそうになる。最初の方はわからなくて、いいのがきましたねーって言ってたけど(ぜんぜん売れない)。とにかく体力使っちゃうんだもん、あれ。途中でくくってた紐がちぎれたときはもう泣きそうになった。

そこは大変なところですよね。うちの場合は大学の先生がお客の核になるので、大学研究室の片付けに呼んでもらえたりすると結構いいんですけど、今年はコロナで...
━━大学の研究室で定年退職される先生のところに喜んでいくんですけど、もうほとんど無理、(ISBNついていないから)うちでは無理。読んだら絶対いい本なんだけど。でもその横に、献本がある。他の先生からもらってまだ読んでない(新品の)本が山積みになってて。おおーって。

自分で使う本は線引いちゃったりするんだよね。献本されて、読まなかった本は触ってないからすごく状態がいい。
━━出張買取の地域は限られていますか?

まあ首都圏ですよね、原則。稀に他にも行きますけど、ごく稀です。
この間千葉に行ったんですけど、おばあさんで。(行くまえに)電話して。自分の夫の持ってた本で、バーコードがついてる本は前に他の業者さんが入って持って行ってしまって、残った日本語の本はお友達がだいたい持って行ってしまった。自分は全然わかんない外国語の本だけ残っているって。ギリシャの勉強していた方の本らしいんですけど。

今まで外国語(の本)は大抵、どうにもならなかった。だけどその方は専門の研究者でたくさん残ってるって言うので、一応行ってみるかって。そしたら、本当に外国語の本ばかりで、僕もよくわかんないんですけど、18世紀の本とかもあった。

「捨てるものだから、ただで持っていっていい」と言われたんですが、それじゃ悪いから3万円置いて、ハイエース一杯積めるだけ積んで帰りました。
それを洋書会っていう(古書組合の)市場に出してみた。そしたら(買取金額の)何倍にもなった。余談ですけど。(笑)
━━おお...

今までそういうの洋書会出しても、金額がつかないことが多かったんですけど、これはよかったなぁって。ただ、洋書会でも半分まではいかないけど、3分の1くらいは買い手が付かなくてそのまま古紙回収に回す感じになる。
━━専門家でも。そうか分野によるのか。

前にもギリシャ語の本やって、全部誰も買ってくれなかった中国語の本も車いっぱい買ってって、それは一冊も売れなかったことあります。すごい苦労して運んだのに。
━━タイミングとかもあるんですかね?

タイミングじゃないと思うんだよなぁ。本当にダメだったんだろうね。

古本・古書業界のこれからについて思うこと

━━過去からの歴史の流れからいった時の読み、今からの古書業界これからどうなるかっていうところをお聞きしたい。

僕が予想してもあんまり意味がないけど。
━━いやいやいや、そんなことないです

大量出版時代はもうすでにだいぶ前に終わってるんですよ。だから色々の本があるって時代になっているので、少しずつ売れる時代になってるので。

個別に価値を見ていかなきゃいけない。データが必要だってことはわかりきってる。ブックオフでさえそうなってきている。ブックオフが何でも同じ(買取価格)でよかったのは、大量出版で同じ本がたくさんある時代だったから。

でも今は(ブックオフも)個別データで買取してるので、そこはもうみんなそうなるし、僕らみたいな「勘」みたいなのがどうなるかわかんないけど。個別のデータでやっていくお店というのは、やっぱり最強のところだけが生き残って、中くらいのところは消えていくしかないかなーと思いますけどね。

どうなんでしょうね。バリューブックスさんはいま、トップを走ってて。僕はノースブックスさんみたいな中くらいところがどうすんのかなーってのはすごく心配なんだけど。北野さんと一緒に古書組合で仕事してますけど、彼も悩んでるんじゃないかなって思いますけどね。

━━今までちょうどいいところにいた人たちが困る

個人の感性みたいのでやる人は、個人の感性でなんとかなるんでしょうしね。データなら最強のところ2つ3つくらい(生き残り)で。1つになるかはわかんないけど。
 

古書買取も「データ」で行う時代に

古本買取東京_よみた屋インタビュー_データの時代 ━━ウチはISBNありの本しか買取していない。古書(ISBNなし)はAmazonでデータを見て売れるかどうか判断する

今のISBNなしのASINしかない本のデーターってほとんど役に立たないと思いますよ。粗いというか。今後もうちょっとデータが蓄積されれば何とかなるかもしれないけど。過去の販売履歴見れるキーパとかそういうのをみると、3年で2冊しか売れてないっていうのだと、確かにそんなには売れないんだってことはわかるんだけど、でも値段とかよくわかんないじゃないですか。

それよりは、どういう著者でその著者の主要な本なのかとか、そういうことをどうやって見抜いていくかっていう。そうするとそっちのデータはむしろ蓄積できるかも知れない。

それは目利きに近いんだけど、目利きを昔のエキスパートシステム、AIですね、みたいな方法でやっていくのはどうかなと。

例えば出版社とかで点数をつけて、みすず書房は80点、講談社なら50点とか。出版社でつけるとか、装丁の仕方で菊判とかA5版の本とB6版のだったらA5版の本の方が専門書率が高いとか、だからプラスとか、そういうのやったらどうですか?(笑)
━━まさに。(インターネットで売れなかった本を)選書する人たちが社内にいるんですが勘所とかそういうのは情報として蓄積されてない。

(勘所は)本の内容じゃないと思っているんですよ。メタデータって言ってるんですけど、本の作りとか、表紙が硬いか柔らかいかとか絵が書いてあるかどうかとか、索引があるかないかとか、文字の組み方とか。そういうところで直感的に僕らはこれは専門書、これは教科書、これは読み物って1秒以内に全部分けられるはずなんですよ。

ていうか慣れた人は分けられるじゃないですか。
━━そうそう。(知っている人は)早いですよね。

それは内容読んでるわけじゃなくて見た感じじゃないですか。見た感じって結構数値化できると思うんですよね。それは認知科学の専門家とかにやって貰えば。ディープラーニングとかでもできるかもしれない。目利きの人に仕分けさせて、パターンをディープラーニングさせれば。売れる本と売れない本を見分けるAIとか作れる、かもしれない。
━━(ウチのように)形式を追うならそっちの方が合う

だって古本屋だって内容読んでるわけじゃないですからね。あと文体とかもあるんで、その点では読みます。学術書で専門の人に書いているのか、一般の人向けに書いているかで文体違うじゃないですか。文体は見分けるのはAIが、得意技に近くなってるんじゃないか。
━━パターンを見出して機械とかAIがやれるようになるんじゃないかという。もうGAFAがやってるかも。でも日本の書物についてはまだやってないか...

古本屋以外は、専門書かどうか分けるなんてあんまり意味がないから。
━━ウチではいま(オープンブックカメラで)書影読み込んでますね。

書影は背も別に読んでるわけですか?背と、表紙と、裏表紙も 。
━━そうですね。

奥付(おくづけ)もやってるんですか?
━━奥付はやってないですね。

奥付を読み取る方法ってないんですかね?名刺読み取りみたいな感じで。あと、本棚査定って、あれすごいですよね。すごいなーって思う。

━━奥付あったらもっと踏み込めますもんね。そうかそうか。うちはちゃんとやってはいるのか。(笑)

背を取っておくっていうのは、すごい先見の明ですよね。本棚査定はやっぱりすごいと思いますよ。
だってAmazonの携帯のアプリで写真撮って書影情報出てくるヤツ、全然うまくいかないんだもん。バリューブックス(本棚査定)の方がずっと役に立ってる。
━━そっか。だからあれをもう一歩進めて、学習する方法っていうのを。

どんどん使ってたらどんどん頭良くなってくようにならないですか。
━━それだ

うまく読み取れなかったのとか読み取り違いしたやつを訂正できるようになってると使った人がみんな訂正してくれて、どんどん頭良くなって。でも、本当にすごいと思う。

もっともっと、先を走ってください。
そしてインフラとしてみんなに提供してくださいよ。(笑)
 

『よみた屋』の本屋としての「在り方」

古本買取東京_よみた屋_澄田さん 本屋としての在り方としては、「道」のようなものだといつも思っています。

本屋は店主の思想を表現する場所じゃなくて、僕はクリエイターじゃなくて流通を扱う商人なので。読者がいる限り、あるいは本を売りたい人がいる限り、その本をなるべく通してあげる。僕らが交通整理をして、なるべく円滑に、安全に、通してあげて。

まあ、安全に、はないかな、車じゃないから。(笑)
円滑に通してあげて、道路整備するための費用はいただきます、みたいな。
━━根底にはやっぱり良い本を(通したい)っていうのが。

自分の好き嫌いはありますけど、わかんないですよね。良い本かどうか。悪い本も悪いなりに、現代の文化として意味はあると思うんですよ。雑多なものがいろいろあるっていうことも含めて「本の文化」だと僕は思ってるので。
━━あぁ、すごい

そういうのも全部できるだけ、次の世代に残したいけど、同じ物がいっぱいあるわけですから、当然全部残せない。減らしてかなきゃいけないんだけど。でも減らしつつ、次の世代に必要なものはちゃんと残すと。
━━その目利きをしているのかも知れない
僕は目利きをそこでしているっていうよりは、お客さんにもちろん選んでもらうんですよ。お客さんに選んでもらうのを補助してるっていうか。お客さんの目みたいなものを代行してるだけで、自分の目利きをしているつもりはあまりないんですよ。

━━すごい深いですね。自分だとどうしてもエゴが出ちゃう気がする。

でも限界はありますよ。わかんないものはわかんないし、さっきもギリシャ語とか、ギリシャ語すらでない何語だかわからない、文字もアラム文字なのかユダヤ文字なのかわかんない、みたいなのもあるし。(笑)

そういうのを扱ったこともあります。外語大があるのでこれも持ってってよ、みたいな。あ、でも今はね、グーグル翻訳とかあるからこうやってかざすと、だいたい分かったりするけど。(笑)

あの頃はないから。でもちょっとこうめくると、大体ラテン文字が少し書いてある。
━━もしかしてアリストテレスくらいは分かっちゃったりするのかなぁ...すごいなぁ

大体ちょっと書いてありますよねラテン文字で何か書いてありますよね 。それか、中国語で、あっ、キリル文字の時はありましたね。
━━キリル文字まで!?

この3つのうちのどれかは書いてあります。 中央アジアのものとかだと、キリル文字で書誌情報がちょっと書いてあったりしますね。
━━そういう出会いもあるんだ...なんかドキドキ系の話が聴けた...

(話が逸れたけど)良い本悪い本っていうか、求めてる人がいるかいないか(が重要)で、求めてる人がいるのに僕がここで遮っちゃいけないんですよ。なるべくそれがないようにしてる。よっぽどひどいもの、法令違反のものとかそういうのはしょうがないと思いますけど。

あとはまあ「ヘイト本」みたいなのは、あんまりやりたくないなーって。
━━訊こうと思ってたんですよ。やっぱりそれは遮っちゃう?

まあ100円均一ところに出したりするので。
━━それはひどいいじめ方ですね。(笑)

━━その本を求めてる人を感じ取るというか、そういう感じですかね?

感じ取るというか、経験上知ってなきゃいけないので。もちろんミスはあると思いますけど、それは最小に抑えたいなーと思ってますね。
━━そうか。そこを突き詰めていくのか。

そこで、ミスしたら商売上も損ですしね。(笑)
━━リアル店舗で人と繋がってるからこそ、確固とした見方ができるのかなって僕は思ったんですけど

いやでも(インターネット)通販でも売れるんだから。だって、Amazonで見たらこれ1冊しか売ってないわ、とか「日本の古本屋」で見たら、この本いっぱい在庫しているわ、とかわかるじゃないですか。ネットになってすごく明らかになってきたなーって思います。流通コストすごい下がりましたよね。
 

インターネットの古本屋「バリューブックス」が持つ可能性

━━正直、そんなに大きな古本屋さんじゃないところで、お話を聞ければみたいな非常に不遜な構えで来てしまったんですけれども。だけどすげえスケールでかい話聞いたような気がして。時間の長さも世界の捉え方も。キリル文字まで出るとは。
僕らもできる範囲でできることをやってるって言うのは変わりはないけれど...
そうだと思いますよみんな。だって、仕事だからできる範囲でできることを一生懸命やらなかったら、食べていけないですもんね。
━━でも世界観が小さいかったですね。(お話を聞いて)ちょっとうわべだけ見てやってたと感じました

そうですかね。僕はバリューブックスさん本当すごいなって思うけれど。
僕はもうずっと、本は内容じゃなくて、形式、メタデータで見分けろって言ってるし。それは、みんな知ってると思うんですよ。

メタデータっていうのは、例えば夫婦喧嘩とかする時に言ってる内容よりも言い方とかの方が重要な情報を持っている。本だって、文字で書いてある論理的な内容以上に言い方みたいな部分ってのが、すごくあってそっちが情報を多く持っていると思います。

━━そこら辺はこういう風にお話を聞いたり教えていただいたりとか、協力してできる部分ってすごいあるかも知れない。ある程度ちゃんと言語にしてくれるから。(バリューブックス取締役の)清水さんとかこの(頭の)中にあるんだろうけど、やれるけどわかんなーい!って感じだし。(笑)

いや、そうですよ。普通は「やれるけどわかんない」です。でも、メタデータをどういう風に読み解くかっていうのを、もっと言語化できるとこれが人に教えられるんですよ。それができないってなって。

ずっとそれを模索してるんだけど、ここ10年くらい悩んでますけど、スタッフにこのメタデータの見方を伝えるっていうのはなかなか上手くいかない。
━━考えるな!感じろ!みたいな。(笑)

違うってことは言えるんですけどね。
━━何が違うのかっていうのを、その人がわかるように伝えるのは難しい

あなたのやっていることはここが間違っててこうでしょ?っていうのは1個ずつは言えるんだけど。でも例えば教科書と専門書を区別するのに、教科書はたいてい複数の著者名が書いてあって、しかも「著」じゃなくて「編」って書いてあるんですね。

1人の人が自分の考えてることを書いてる本だったら、基本的に著者名は1人とか、せいぜい2人ぐらいなんだけど。5〜6人書いてあって、「編」とかなってたら、それは一般的な通説だけが書いてある本である可能性が高いとか。あるいは論文集って可能性もありますけど、でもなんとか概論で色んな人の名前が書いてあったら、まず教科書だよみたいなことは個別には言えるけど。
━━それは言語化されてますね

言語化できたわずかな事例ですね。とか、何回か言いましたけど、菊判だと大体専門書だよとか。箱に入ってるのは専門書率が高いとか、青土社の本だったら詩集か現代思想の本ですよとか。そういうことは言えるけど、なんかその、断片的な一部は言えるけど。

全体を通しての、いま言ったような「外延と内包」で言えば、外延は説明出来るけど、内包としての概念を出せないんですよ。もっとあるはずなのに。
個別のデータはあるんですけど、全体を通したら理論がないんですよ。
━━体系化されないんだ

うーん。体系化できない。
━━それができたら、おっしゃられてたような必要とされている本を残していくというか読み継いでいくってことも。今だって今この瞬間にも必要な本はどこかで捨てられたりするわけだし。で、必要な本をたくさん集められる僕たちみたいな本屋は「(ISBNがついていない本は)それはウチでは買取れません」と言っちゃったりするわけで。(メタデータを分析して、買取の「勘所」を言語化・体系化することがれば)もっと効率よく出来るようになればいいですよね。澄田さんの言う交通整理がより上手く出来るようになっていけたらいい。

でもバリューブックスは(そういうことを実現できる)可能性はあると思う。
━━そうですよね。おっしゃってるようなメタデータを取るための素材集めとか材料集めはやろうとしている、やってるから。 ━━(ウチの社長も自分で言ってるけど)根本的に本が「分からない」人が作った本の会社なので。あ、これ社長とかに伝わると怒られるけど。(笑)

でも、本が「分かる」っていうのは、まあないですよ。
僕なんか、古本屋としては本がわからない方だと自分では思うし。他の本屋さんもあいつは本がわからないって言うと思いますよ。
━━わからない、って思うのが本質なのかもしれない

読んでない本屋も多いですからね。全然読まないって人もいる。この間やめちゃった、ささま書店。社長だった伊東さんって人は、今までに読んだ本は2冊って言ってましたけどね。
━━ええー!荻窪の帝王みたいな人が...
店員さんは本読んでる人が多いですけどね。でも社長はそういう感じだった。だけど社長はなんでも知ってる。何がいくらってのは全部知ってるっていうね。
━━本に対する「見方」が違うんだ

個別の本に対するこだわりが逆に「ない」んですよ。本という文化全体に対しては、それなりの意識はあるんでしょうけど、個別の本に対するこだわりがない。

そういう人は強いと思いますよ。
━━じゃあバリューブックス最強じゃないですか

バリューブックスも強いと思いますよ、そういう意味でも。
━━たしかにそういう意味では偏見はないですよね。ウチの社長は。

高原書店の社長もそういう人だった。個別の本に対してはあんまり拘らない。だからこの本はいい本だから高くつけろとか、そういうことは一切なかった。高くつけても売れるかもしれないけど、買う人は畜生と思って買うから、そうじゃなくて、得したなって思うぐらいの値段でつければいいんだって。
━━商売人だ

お前が思った値段より2,3割安くつければいいんだよっていつも言われてましたね。(笑)
(ここでインタビューは終了しました)
 

あらためて、古本買取について思うこと(廣瀬)

東京の古書店を回りたいという担当の大野さんからの依頼を受けた時に「よみた屋」という屋号が天から降りて来ました。「東京の古書店」というイメージをリアルにすると、この店になるんじゃないかと。(正直、小さめなリアルに。)

でも、澄田さんの話を聞いて途中で感じたのはどちらかというと真逆。澄田さんという人間の中に「古書店」という壮大な時空にまたがる宇宙があって、吉祥寺から我々の住むリアルで小さな現象世界に向けて本と言う形のメッセージを送っているのが真実なんじゃないかと。

いつの間にか自分は頭の中まで在宅勤務になってたのかも?お金と数字をリアルと履き違えて、その上、薄っぺらな論理で公正や正義を語って。

ああ、早く上田の書庫に行って澄田さんの言うような「ひたすら形式で古書店の本質を追求する方法」を考えたいと思い始めました。

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『よみた屋』
古本買取東京_よみた屋_澄田さん お店の場所:東京都武蔵野市吉祥寺南町2-6-10
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>>店主澄田さんのツイッター
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